着物ができるまで

着物の仕立てとは?反物から完成までの工程・種類・期間を解説

反物と仕立て上がった着物を並べた着物の仕立てイメージ

着物の仕立ては、反物を着物の形に裁って縫うだけの作業ではありません。着る人に合う寸法を決め、反物の長さや幅を確かめ、模様が美しくつながる位置を考え、表地と裏地のつり合いまで整えて一着に仕上げる仕事です。

同じ反物でも、袷にするか単衣にするか、どの場面で着るか、ゆったり着たいかすっきり見せたいかによって、必要な材料や仕立て上がりの寸法は変わります。訪問着のように縫い目を越えて模様が続く着物では、柄合わせも仕上がりを左右します。

仕立てを頼むときは、仕立て代だけでなく、湯のしや湯通し、裏地、紋入れなどが見積もりに含まれているかを確かめることも大切です。完成までの期間も、着物の種類、前加工、手縫いかミシン縫いか、依頼先の混雑状況によって異なります。

この記事では、反物から完成までの一般的な流れをたどりながら、採寸と着物寸法の関係、袷・単衣などの種類、手縫いとミシン縫い、未仕立て・仕立て上がり・仕立て直しの違いまで解説します。

この記事で分かること

  • 着物の仕立てが担う役割
  • 反物から完成までの主な工程
  • 袷・単衣と手縫い・ミシンの違い
  • 仕立ての期間と料金の考え方

着物の仕立てとは

仕立ての意味を理解するには、反物、染め・織り、着付けとの境目を分けて考えると分かりやすくなります。

反物を着られる一着にする工程

着物の仕立てとは、反物や仮絵羽の状態にある生地を、決めた寸法と仕様に沿って裁断・縫製し、着用できる形へ仕上げることです。和服を裁ち縫う技術は和裁と呼ばれ、長着だけでなく、長襦袢、羽織、コート、袴なども対象になります。

一般的な長着は、身頃、袖、衽、衿などの部分から構成されます。洋服のように身体の曲線に沿った多数の曲線パーツを作るのではなく、反物の幅を生かして直線を中心に裁つことが大きな特徴です。ただし、直線裁ちだから簡単という意味ではありません。限られた長さの中で各部分を配置し、柄、傷、布目、縫い代、将来のお直しまで考える判断が伴います。

仕立ては、寸法を決める「設計」と、反物を各部分へ割り当てる「裁ち合わせ」、実際の「裁断・縫製」、形を整える「仕上げ」が連続したものと捉えるとよいでしょう。

染めや織りとは別の仕事

反物ができるまでの染め・織りと、反物を着物にする仕立ては別の工程です。先に糸を染めてから織るものもあれば、白生地を織ったあとに染めるものもあります。完成した反物や、絵羽模様を仮縫いした仮絵羽が仕立てへ渡り、そこで初めて着る人の寸法を持つ一着になります。

誠
誠
私は家業で、反物の引き染めの「引き切り」と、染色前の「地入れ」や材料の調合などに携わっていました。ただし、そこで行っていた染めの下準備と、着物を裁ち縫う仕立ては異なる仕事です。

名称が似ていても、染色前の地入れと、仕立てに際して行う地直しや湯のしは、同じ作業ではありません。仕立てを理解するときは、染め、織り、前加工、和裁を一続きにしながらも、それぞれの専門工程を混同しないことが大切です。織物が反物になるまでの一例は、凜然の「西陣織の特徴と制作工程」でも紹介しています。

誂え仕立ての価値

反物から寸法を決めて仕立てることは、一般に誂え仕立て、またはお誂えと呼ばれます。身長だけでなく、裄、腰回り、腕の長さ、着方の好みなどを仕上がりへ反映できることが利点です。既製寸法が合う方には仕立て上がり品も便利なので、予算、納期、体型との相性で選びます。

反物から完成までの工程

仕立ての順序や呼び方は、着物の種類、反物の状態、仕立て所によって異なります。ここでは、長着を誂える場合の代表的な流れを見ていきます。

検品と検尺を行う

最初に、反物の表裏、色柄、織り傷、染めむら、汚れ、色やけなどを確認します。これが検品・検反です。気になる箇所があれば、目立ちにくい部分へ回せるか、仕立てに支障があるかを判断します。

続いて反物の長さと幅を測る検尺を行い、希望する身丈や裄を確保できるかを確かめます。標準的な反物であっても、幅や長さは一律ではありません。古い反物、幅の狭い反物、仮絵羽、途中まで加工された反物では、希望寸法が取れないこともあります。

裁断後は元の反物へ戻せないため、傷や用尺の確認は仕立て前に済ませる必要があります。持ち込みの反物では、受付時に状態を一緒に確認し、難点がある場合の扱いを書面や連絡記録に残しておくと安心です。

仕立て前に広げて状態と寸法を確認する着物用の反物

仕立て前には、反物の状態や幅・長さを確認してから寸法や裁ち方を決めます。

前加工の要否を判断する

反物の種類や状態に応じて、湯のし、湯通し、地直しなどの前加工を検討します。これらは、生地の風合いや布目を整え、仕立て後の縮みや狂いを抑えるために行われますが、すべての反物へ同じ加工をするわけではありません。

一般には、染め物の反物では蒸気を用いる湯のし、紬などでは水分を通して糊を落とし寸法を安定させる湯通しが提案されることがあります。ただし、素材、染料、絞り、金彩、刺繍、撥水加工の有無などによって適否は変わります。加工名だけで自分で処理せず、反物を確認できる専門店へ任せる方が安全です。

採寸から寸法を決める

採寸では、身長、裄に関わる肩幅と腕の長さ、胸回り、腰回りなどを確認します。その数値をそのまま布へ写すのではなく、着物の種類、女性物か男性物か、着方の好み、体型、使用する長襦袢との関係を踏まえて、仕上がり寸法を決めます。

手持ちの着物で着やすい一着があるなら、その実寸を基準にする方法も有効です。ただし、普段着の紬と礼装用の訪問着、長着とコートでは、同じ人の品でも適した寸法が完全に同じとは限りません。採寸値と基準にする着物の両方を伝え、どちらを優先したか確認すると行き違いを防げます。

柄合わせと裁ち合わせをする

寸法が決まると、反物のどの部分を身頃、袖、衽、衿へ使うかを考えます。和裁でいう裁ち合わせや見積もりは、単なる料金見積もりではなく、必要な各部分を反物の中へ割り振る重要な設計です。

訪問着、振袖、留袖などの絵羽模様では、上前の衽から前身頃、脇、袖などへ模様がつながるように位置を調整します。小紋でも、模様の向きや目立つ柄が左右に重なりすぎないかを見ます。縞や格子の織物では、線の通り方が印象を左右するでしょう。

反物に傷や色やけがあれば、衿の内側や下前など、着用時に目立ちにくい場所へ回せるかも検討します。柄を優先すると希望寸法を取りにくくなる場合があるため、どちらを優先するか依頼者との相談が必要です。

印付け・裁断・縫製へ進む

裁ち合わせが決まったら、生地へ仕上がり線や縫い代の印を付け、裁断します。その後、身頃、衽、袖、衿などを縫い合わせ、縫い代を始末し、衿や袖を付けて形にしていきます。

袷では表地と裏地をそれぞれ組み立て、裾や袖口などで合わせます。表地と裏地は素材や伸縮の具合が違うため、片方がつれたり余ったりしないよう、つり合いを取ることが欠かせません。単衣は全面の裏地がないぶん、縫い代の始末が見えやすく、生地に合ったくけ方や補強が求められます。

具体的な縫う順序は、袷、単衣、浴衣、男性物などで異なり、仕立て所による手順の違いもあります。したがって、一つの順番をすべての着物へ当てはめることはできません。

仕上げと最終検品をする

縫製後は、こてやアイロンなどで縫い目と形を整え、仕上がり寸法を確認します。汚れ、針や糸の残り、縫い目の不具合、柄のつながり、表地と裏地のつり合いなどを検品し、たたんで納品されます。

受け取った側も、身丈や裄、八掛や胴裏、紋や居敷当などの追加仕様を早めに確認しましょう。長襦袢と重ね、袖丈・袖幅の収まりを見ることも大切です。

仕立ての流れ

検品・検尺から始まり、必要な前加工、採寸と寸法設計、柄合わせ、印付け、裁断、縫製、仕上げ、最終検品へ進むのが大きな流れです。反物や依頼先によって、順序や工程名が前後する場合があります。

採寸と着物寸法の考え方

着物は多少の体型差を着付けで調整できる衣服ですが、寸法が合っているほど衿合わせや裾、おはしょりを整えやすくなります。

身体寸法と仕上がり寸法は違う

採寸で測るのは身体です。それに対して、身丈、裄丈、前幅、後幅などは完成する着物の寸法を指します。仕立てでは身体寸法から仕上がり寸法を導きますが、計算式だけで機械的に決めるものではありません。

例えば、腰回りに対して身幅が狭いと、上前が戻って裾が開きやすくなります。反対に広すぎれば、布が余って着付けに手間がかかることがあります。裄は腕の長さだけでなく、肩幅との配分や着姿の好みによっても調整されます。

女性の長着ではおはしょりを作るための長さを含めて身丈を考えますが、男性の長着は原則として対丈で着るため、丈の決め方が異なります。誰の、どの種類の着物かを明らかにして寸法を決めることが基本です。

確認したい主な寸法

依頼時や仕立て上がり品の購入時に目にする主な寸法は、次のとおりです。測る位置や、肩から測るか背から測るかで表記が変わる項目もあるため、数値だけでなく測定方法も確認します。

袖や身頃、衽、衿の形が分かるよう平置きした完成済みの着物

身丈や裄丈、袖丈、身幅などは、身体寸法を基に完成する着物の寸法として決めていきます。

寸法 おおよその意味 着姿との関係
身丈 肩または背から裾までの長さ おはしょりや裾位置に関わる
裄丈 背中心から肩を通り袖口までの長さ 手首付近の袖の届き方を左右する
肩幅・袖幅 裄を肩側と袖側に分けた寸法 長襦袢との重なりや袖付けに関わる
袖丈 袖の上下方向の長さ 着物の種類と長襦袢の袖丈に合わせる
前幅・後幅 腰回りを包む身頃の幅 衿合わせと裾の重なりに関わる
衽幅 前身頃に付く細長い部分の幅 前の重なりと衿下の形に関わる
衿下 裾から衿先までの長さ 腰回りの見え方や着付けに関わる

長襦袢との整合も確かめる

着物だけを身体に合わせても、長襦袢の袖丈や袖幅が合わなければ、振りから襦袢がはみ出したり、袖の中でもたついたりします。すでに使いたい長襦袢がある場合は、その寸法を仕立て先へ伝えましょう。

複数の着物で同じ長襦袢を使いたいなら、袖丈や袖幅を共通化する考え方もあります。ただし、振袖と通常の長着、年代の異なる着物などは共用できないことがあります。着物だけでなく、襦袢を含む一組として寸法を考えることが実用的です。

袷・単衣など仕立ての種類

仕立ての種類は、裏地の有無だけでなく、使用する生地、季節、着用場面、着心地にも関わります。

袷仕立て

袷は、表地に裏地を付けた仕立てです。女性の一般的な長着では、上半身側などに胴裏、裾回りに八掛を使います。裏地が表地を支え、裾さばきや保温性にも関わります。

表地の内側に裏地が付いた袷の着物の裾部分

袷は表地の内側に胴裏や八掛などを用いる仕立てで、裏地を含めたつり合いも仕上がりに関わります。

袷は秋から春に着るものとして説明されることが多く、留袖、振袖、訪問着などの礼装・準礼装にも広く用いられます。ただし、着用時期は気温、地域、会場の空調、行事の慣習によって調整されるようになっています。式典では主催者や会場の考え方も確認すると安心です。

黒留袖では、下に白い着物を重ねたように見せる比翼仕立てが一般的です。比翼地とその縫製が加わるため、通常の袷より材料と手間が増え、料金や納期も変わります。

単衣仕立て

単衣は、胴裏や八掛のような全面の裏地を付けない仕立てです。袷より軽く、気温の高い時期に向きます。従来の衣替えでは主に初夏や初秋の装いとされてきましたが、現在は実際の気候や着用環境も考慮して選ばれています。

裏地がないから袷より単純とは限りません。縫い代の処理が内側に見えるため、くけや始末が仕上がりに表れます。生地の透け、強度、着用頻度に応じて、背縫いを保護する背伏や、腰・尻回りを補強する居敷当を付けることもあります。

居敷当を付けるかどうかは一律ではありません。透ける薄物では見え方に影響し、付けない選択もあります。生地と用途を見て相談しましょう。

薄物・浴衣・胴抜き仕立て

薄物は、絽、紗、上布など透け感や通気性のある盛夏向けの生地を用いた着物です。構造としては裏地を付けないものが中心ですが、一般的な単衣とは生地の性質や縫い代の見え方が異なります。透けることを前提に、糸や縫い代、居敷当の選び方まで配慮します。

浴衣も基本的には裏地を付けずに仕立てます。木綿は扱いやすそうに見えますが、反物によっては水通しや柄合わせが必要です。絞り浴衣や特殊な染色・加工の反物では、一般的な木綿と同じ処理が適するとは限りません。

胴抜き仕立ては、胴の一部の裏地を省きながら、裾回りなどに裏を付ける仕立て方です。軽さを求める選択肢になりますが、仕立て方には違いがあり、表地との相性もあります。

仕立て 構造の目安 確認点
袷 表地に胴裏・八掛などを付ける 裏地代、表裏のつり合い、着用時期
単衣 全面の裏地を付けない 縫い代の始末、背伏、居敷当
薄物 透ける夏生地を単衣状に仕立てる 透け方、糸、縫い代、補強布
胴抜き 胴部の裏地を一部省く 省く範囲と裾回りの構造
比翼付き 重ね着のように見える比翼を付ける 比翼地、追加料金、重量

手縫いとミシンの違い

着物は手縫いだけでなく、ミシン縫いや、両方を使う併用仕立てもあります。縫い方の名称だけで品質を決めつけず、素材と用途に合うかを見ます。

着物生地と手縫い道具、ミシンを置いた和裁の作業環境

着物の仕立てには手縫い、ミシン縫い、両方を用いる併用仕立てがあり、素材や用途に応じて選ばれます。

手縫い仕立ての特徴

伝統的な和裁は手縫いを中心とします。手縫いの縫い目には適度な融通があり、身体の動きや生地の性質に応じて力を逃がしやすいこと、縫い目を解いて仕立て直しや部分直しをしやすいことが利点です。

正絹の礼装、繊細な生地、将来の仕立て直しを考える品では、手縫いが選ばれることが多くあります。ただし、「手縫い」と表示されていても、どこまで手で縫うかは依頼先によって異なる可能性があります。国内仕立てか海外仕立てかという区分とも別の話です。

和服の仕立てには専門的な技能と知識があり、厚生労働省の技能検定には和裁職種が設けられています。依頼先を資格だけで決める必要はありませんが、経歴を確認する一つの手がかりとして、厚生労働省「和裁技能士」の案内も参考になります。

ミシン縫いと併用仕立て

ミシン縫いは縫い目が均一で丈夫になりやすく、作業時間と費用を抑えやすい方法です。洗えるポリエステル着物、浴衣、既製品などで広く使われています。直線部分をミシンで縫い、衿、裾、表から縫い目を見せたくない部分を手縫いにする併用仕立てもあります。

一方、細かな針穴が連続するため、正絹などでは解いた跡が残る場合があります。縫い目が強いことが、生地にとって常に有利とも限りません。強い力がかかったとき、糸ではなく生地側が傷む可能性も考えます。

価格だけで選ばない

大切なのは、手縫いかミシンかだけでなく、どの部分をどの方法で縫い、どの検品基準で仕上げるかです。普段着として気兼ねなく洗いたい着物なら、ミシン縫いの丈夫さと価格が利点になります。大切な正絹の反物や、将来寸法を変えて受け継ぎたい品なら、手縫いの意味が大きくなるでしょう。

見積もりの際は「手縫い仕立て」「ミシン仕立て」という名称だけで判断せず、併用の有無、国内・海外の別、検品、寸法保証や手直しの対応まで確認します。

未仕立てと仕立て上がりの違い

販売時に使われる言葉は、今すぐ着られる状態か、これから別料金や日数が必要かを見分ける手がかりになります。

状態・作業 意味 購入・依頼時の注意
未仕立て 反物や仮絵羽など、まだ着用できない状態 仕立て代、裏地、前加工、納期を確認
仕立て上がり すでに着物の形へ縫製された状態 実寸、素材、縫製、状態を確認
誂え仕立て 着る人や指定寸法に合わせて仕立てること 採寸方法と仕様書を確認
お直し 裄、袖丈、身幅など一部を直す作業 縫い込みと生地の状態に限界がある
仕立て直し 着物を解き、必要に応じて洗い張りし、再び仕立てること 解き・洗い張り・再仕立ての費用を確認

未仕立ては反物だけとは限らない

未仕立ては、まだ着用できる形になっていない品を指します。小紋や紬のような巻いた反物だけでなく、訪問着や振袖などが柄を確認できるよう仮縫いされた「仮絵羽」の状態も含まれます。

「仕立て付き」と表示された商品は、販売価格に所定の仕立てが含まれるという意味で使われることがありますが、注文時点では未仕立てです。裏地、湯のし、ガード加工、国内手縫いへの変更などが別料金になる場合もあります。商品代に何が含まれているかは、名称ではなく内訳で確認してください。

仕立て上がりは実寸を確認する

仕立て上がり品は、届いてすぐ着られることが利点です。新品の既製品にはS・M・Lなどの規格寸法があり、リユース品は前の所有者に合わせた一点ごとの寸法になっています。

洋服と同じサイズ表示でも、着物では身丈、裄丈、前幅、後幅、袖丈の確認が欠かせません。素材や色柄が好みでも、裄や身幅が足りなければ着姿を整えにくくなります。お直しを前提に買う場合は、縫い込みが残っているかも確認しましょう。

仕立て直しには限界がある

仕立て直しは、完成した着物をいったん解き、反物に近い状態へ戻して再び仕立てる作業です。洗い張りを組み合わせれば、汚れを落とし、布目を整えてから寸法を変えられる場合があります。親族から受け継いだ着物を自分の寸法へ近づける方法の一つです。

ただし、以前の裁断で布が短くなっている、裄を出す縫い込みがない、折り跡や色やけが表へ出る、生地が弱っているといった場合は希望どおりになりません。部分的な裄直しや身幅直しで済むのか、全面的な仕立て直しが必要かも異なります。

仕立て直しの注意点

古い着物を解くと、隠れていたシミ、弱り、切れ、仕立て跡が見つかることがあります。希望寸法だけで可否を決めず、解く前の見立てと、問題が出た場合の連絡・追加料金を確認しましょう。

仕立ての期間と料金

納期と料金には幅があります。目安を知ったうえで、着用日から逆算し、仕立て代と材料・加工代を分けて見積もることが大切です。

完成までは1~2か月が一つの目安

反物と寸法、裏地などがすべて揃ってから、一般的な仕立てで約1か月から2か月が一つの目安です。仕立て所によっては約1か月を標準納期としていますが、これはすぐに縫い始められる場合の例であり、全国共通の日数ではありません。

湯のし・湯通し、紋入れ、刺繍直し、ガード加工、八掛の染め、解き洗い張りなどが加われば、その分だけ工程が増えます。柄合わせの難しい絵羽物、比翼付きの留袖、繁忙期、複数枚の同時依頼では2か月以上かかることもあります。

成人式、結婚式、卒業式など着用日が決まっている場合は、2~3か月以上の余裕を持って相談する方が安全です。「最短何日か」だけでなく、前加工を含む受取予定日、遅れた場合の連絡方法、到着後に寸法を確認する時間まで考えましょう。

仕立て代の目安

公開されている国内の仕立て店・和裁所等の料金例を見ると、縫製そのものの料金には次のような幅があります。国内手縫い、海外仕立て、ミシン併用などの条件が異なるため、相場を一つの金額へ固定するのではなく、比較を始めるための目安としてご覧ください。

仕立てる品 仕立て代の目安 別途になりやすいもの
浴衣 約15,000~22,000円 水通し、居敷当
小紋・色無地・紬の単衣 約22,000~42,000円 湯のし・湯通し、衿裏、背伏、居敷当
小紋・色無地・紬の袷 約24,000~42,000円 湯のし・湯通し、胴裏、八掛
訪問着・付下げの袷 約30,000~50,000円 湯のし、胴裏、八掛、柄合わせ関連
振袖の袷 約38,000~61,000円 湯のし、胴裏、追加加工
黒留袖の比翼付き袷 約45,000~84,000円 湯のし、胴裏、比翼地、紋関連

料金は2026年8月21日時点で公開されている複数の仕立て店・和裁所の例をもとにした概算です。税込・税別、国内・海外、手縫い・併用、持ち込み条件が混在するため、実際の依頼では個別見積もりを優先してください。現在の具体例は、和裁所衣裳研究会の仕立て料金でも確認できます。

総額は仕立て代だけで決まらない

袷では胴裏や八掛、留袖では比翼地が必要です。反物によっては湯のし・湯通しが加わり、紋入れ、ガード加工、居敷当、背伏、八掛の色合わせなどを選ぶこともあります。反物の解きや洗い張りが必要な仕立て直しは、新しい反物からの仕立てと費用構成が異なります。

「仕立て込み」の商品でも、標準仕様から手縫い、国内仕立て、特殊寸法へ変えると追加料金が発生する場合があります。

見積もりで確認する内訳

仕立て代、手縫い・ミシン・併用の別、国内・海外の別、湯のし・湯通し、裏地類、追加仕様、送料、消費税、寸法直しの保証、納期を分けて確認します。持ち込み品では、検品料や持ち込み料の有無も聞いておきましょう。

自分で仕立てることはできる?

和裁を学び、自分で着物を仕立てることは可能です。ただし、縫う技術だけでなく、裁断前の判断が仕上がりを大きく左右します。

初心者は浴衣から学びやすい

和裁の入門では、裏地のない木綿の浴衣が教材としてよく用いられます。運針、くけ、印付け、直線裁ち、袖や衿の付け方といった基礎を一着の中で学べるためです。

ただし、浴衣でも採寸、用尺の確認、柄の向き、衽や衿の配置、縫い代の始末が必要です。初めてなら、安価な練習用反物や新しい木綿を使い、和裁教室、信頼できる教材、経験者の確認を受けながら進める方法が現実的でしょう。

難しいのは裁断前の判断

縫い目はほどいてやり直せますが、一度短く裁った布は元へ戻せません。特に、訪問着や振袖の柄合わせ、幅の狭い古い反物、大きな寸法、絞りや刺繍のある生地では、各部分の配置に専門的な判断が必要です。

大切な反物、高価な正絹、受け継いだ品、着用日が決まった礼装は、和裁士や専門店へ相談する方が安全です。自分で仕立てるか依頼するかは技術の優劣ではなく、失敗した場合に取り戻せる反物か、学習に使える時間があるかで判断しましょう。

仕立て先へ相談するポイント

反物を広げて着物の仕立てについて相談する依頼者と担当者

仕立てを依頼するときは、反物の状態だけでなく、希望寸法、着用目的、裏地、縫製方法、納期などを事前に確認します。

仕立ての満足度は、縫製だけでなく、依頼前の確認と意思疎通にも左右されます。

用途と着方を先に伝える

誰が、いつ、どの場面で着るのかを伝えると、袷・単衣、裏地、納期、寸法を相談しやすくなります。採寸を店に任せるのか、手持ちの着物を基準にするのかも決めましょう。オンライン依頼では、肩身丈と背身丈、鯨尺とセンチを取り違えず、指定された測り方を使います。

仕様と責任範囲を確認する

手縫い・ミシン・併用、国内・海外、裏地、居敷当、紋などを確認します。反物に傷や用尺不足が見つかったときは作業を止めて連絡をもらうのか、寸法違いの手直し期限はいつまでかも注文前に決めておきましょう。

受け取り後は早めに確かめる

受け取ったら長期間しまい込まず、注文寸法と追加仕様を確認します。気になる点があれば、しつけ糸をすべて外して着用する前に依頼先へ連絡し、自己判断で強くアイロン処理することは避けましょう。

着物の仕立てに関するよくある質問

最後に、仕立てを検討するときに残りやすい疑問へ簡潔に答えます。

まとめ

着物の仕立てとは、反物を縫う作業だけではなく、検品・検尺、前加工、採寸と寸法設計、柄合わせ、裁断、縫製、仕上げを通して、着る人に合う一着へ整える工程です。袷・単衣などの構造や、手縫い・ミシンの選択によって、材料、着心地、費用、納期も変わります。

料金を見るときは、表示された仕立て代だけで判断せず、裏地や前加工を含む総額を確かめることが重要です。着用日が決まっている場合は、標準納期だけでなく、加工と受取後の確認期間まで含めて余裕を持ちましょう。

この記事のポイント

  • 仕立ては寸法・柄・構造を決めて反物を一着にする工程
  • 一般的な流れは検品・採寸・裁断・縫製・仕上げ
  • 袷・単衣では裏地、縫い代の始末、総額が異なる
  • 手縫いとミシンは素材・用途・直しやすさで選ぶ
  • 期間は1~2か月を目安に着用日から余裕を持つ

仕立てを依頼する前に、反物の状態、着用目的、希望寸法、長襦袢、裏地、縫製方法を一つずつ確認してみてください。大切な反物や古い品では、裁断を急がず、和裁士や着物を扱う専門店に現物を見てもらうことが、納得できる仕立てへの近道です。

  • この記事を書いた人
着物ブログ運営者「Ren」の画像

誠

『凜然(りんぜん / Rinzen)』へようこそ。実家の「引き染め」で育んだ和の原風景と、長年の印刷業で培ったシビアな色彩感覚。ミュシャや天野喜孝などの繊細な名画を愛する感性を掛け合わせ、友禅染などの着物文化から、日常を彩る和小物まで。完成された表面的な美しさだけでなく、その裏側にある「日本の緻密なモノづくり」の奥深い世界をご案内します。 運営者プロフィールはこちら

-着物ができるまで